韓国の住居・家探し完全ガイド ― チョンセ(伝貰)とウォルセ(月貰)、契約から保証金を守る方法まで【2026年版】
韓国で部屋を借りるとき、日本人がまず戸惑うのがチョンセ(伝貰・전세)とウォルセ(月貰・월세)という二つの制度です。結論から言うと、2026年現在、赴任者が実際に契約するのはほぼウォルセです。チョンセは制度として残っていますが、市場の主流ではなくなりました。
そして本当に注意すべきなのは制度の名前ではなく、数百万円から数千万円になる「保証金(보증금)」が返ってこないリスクのほうです。この記事では、二つの制度の違い、2026年の市場実態、そして外国人が保証金を守るために必要な手続きを順に整理します。
チョンセとウォルセ ― 何が違うのか
チョンセ(伝貰・전세)
まとまった保証金を家主に預ける代わりに、契約期間中は毎月の家賃を払わない方式です。相場は物件価格の5〜7割程度。退去時に保証金は全額返還されます。家主はその資金を運用して利益を得るという、韓国独自の仕組みです。
ウォルセ(月貰・월세)
日本の賃貸に近く、保証金を預けたうえで毎月家賃を払います。ただし日本の敷金とは桁が違い、保証金は数百万〜数千万ウォン、物件によっては億単位になります。保証金を多く積むほど月々の家賃が下がるという調整ができる点も日本とは異なります。なお両者の中間にあたる半チョンセ(반전세)もあり、統計上はウォルセに含まれます。

住居のタイプ
建物の種類としては、ホテル並みの設備が整うサービスレジデンス、日本の分譲マンションに相当するアパート・オフィステル、家賃が比較的安い共同住宅のヴィラ、大学周辺に多いワンルーム・コシウォンなどがあります。駐在員はアパートが中心で、家賃はサービスレジデンス>アパート>オフィステル>ヴィラの順が目安です。大型家電・家具が備わっている物件は多くないため、居住が2〜3年以下なら家具レンタルのほうが割安なこともあります。
2026年、チョンセはもう主流ではない
国土交通部の住宅統計によると、2026年1〜6月の賃貸借取引に占める月貰の割合は、ソウルの非アパート(ヴィラ・オフィステルなど)で78.1%。ソウルのアパートでも52%と、前年同期の43.9%から1年で8ポイント上昇しました。全国の月貰比率も2022年の約48%から上がり続け、2026年は約69%と過去最高を更新しています。
背景には、後述する保証金詐欺への警戒感に加え、チョンセ融資規制の強化があります。「韓国=チョンセの国」という前提で情報を集めると、実態とずれます。
保証金が返ってこない ― 詐欺被害の実態
2020年代に入り、韓国では保証金が返還されない被害が社会問題化しました。「チョンセ詐欺(전세사기)」と呼ばれるものです。2023年6月施行の特別法にもとづく被害者認定は2026年半ばの時点で累計3万9千人を超えました。
特徴的なのは被害層です。認定被害者の約76%が40歳未満で、若年層に集中しています。また被害の約95%が保証金3億ウォン以下の案件で、「金額が小さいから安全」とは言えない構造です。
典型的な手口は、物件価格に対して保証金が過大な「カントン・チョンセ(깡통전세)」です。相場が分かりにくい新築ヴィラで起きやすく、競売になっても保証金を回収できません。近年は信託会社が所有者になっている物件で、権利のない委託者と契約させる手口も増えています。
【最重要】保証金を守る3つの手続き

韓国の住宅賃貸借保護法(주택임대차보호법)は、要件を満たした賃借人を保護します。手続きを踏んだかどうかで結果が変わります。
① 対抗力を得る(入居+住民登録)
同法第3条第1項により、住宅の引渡しを受けて住民登録(転入届)を済ませると、その翌日の午前0時から第三者に対して賃借人であることを主張できます。家が競売にかかっても、家主が代わっても住み続けられる権利です。
⚠️ 対抗力の発生が「翌日0時」である点も要注意です。抵当権は当日中に効力が生じるため、悪質な家主が届出当日に物件を担保に融資を受けると、銀行の権利が保証金より優先されてしまいます。この時間差を解消する法改正案が国会に提出されていますが、本記事の時点では従来どおり「翌日0時」が現行ルールです。入居当日から数日は、権利関係が動いていないか確認しておくと安全です。
② 確定日付(확정일자)を受ける
対抗要件に加えて賃貸借契約書に確定日付を受けると、優先弁済権が発生します。物件が競売にかけられても、後順位の権利者より先に保証金を回収できる権利です。確定日付は契約書さえあれば入居前でも取得でき、インターネット登記所(인터넷등기소)のオンライン申請なら手数料は500ウォンです。
あわせてチョンセ・ウォルセ申告制(전월세 신고제)も押さえておきましょう。保証金6,000万ウォン超または家賃30万ウォン超の契約は、契約から30日以内の申告が義務で、怠ると100万ウォン以下の過料の対象です。申告時に契約書を提示すれば確定日付が自動で付与されるため、実務上はこの申告が確定日付の取得を兼ねます。適用は首都圏・広域市・世宗・済州などに限られます。
③ 保証金返還保証(保険)に加入する
最も確実な備えです。家主が保証金を返さない場合、保証機関が先に賃借人へ支払い、後から家主に請求します。運営はHUG(住宅都市保証公社)・SGIソウル保証・HF(韓国住宅金融公社)の3機関で、HUGの保証料率は年0.097〜0.211%です。外国人も加入できますが、外国人登録証や出入国事実証明など追加書類を求められることがあるため、委託金融機関に事前確認してください。ウォルセの保証金も対象ですが、毎月の家賃自体は対象外です。
契約前に必ず確認する書類
- 登記簿謄本(등기부등본) ― 先順位の抵当権(근저당권)・仮差押えの設定額を数字で確認。物件価格に対して過大でないか
- 建築物台帳(건축물대장) ― 違法・違反建築物でないか。該当すると保証保険に加入できません
- 信託原簿(신탁원부) ― 所有者が信託会社の場合、契約相手に権利があるか
- 家主の税金滞納状況 ― 滞納税は保証金より優先されることがあります
- 名義の一致 ― 登記簿上の所有者本人と契約しているか
家探しから契約・入居までの流れ
- 物件探し ― 日本語が通じる不動産会社を使うと安心です。当サイトの日本語対応の不動産会社リストも参考にしてください。
- 内見・条件確認 ― 保証金・家賃・管理費(관리비)・入居可能日を確認します。
- 契約前の権利確認 ★ ― 上記の書類を確認します。ここが保証金を守る最重要ポイントです。
- 契約締結 ― 公認仲介士(공인중개사)立ち会いのもとで契約書を作成。契約書は3部作成し、賃借人・賃貸人・仲介人が保管します。
- 入居・届出 ― 入居後すぐに滞在地変更申告と確定日付(または賃貸借申告)を済ませます。
なお、法律上の賃貸借を仲介できるのは公認仲介士(日本の宅建業に相当)です。日系の「不動産コンサルタント」を利用する場合、法律上の契約は公認仲介士が行い、コンサルタント会社とは別契約になりますが、入居後のトラブル対応窓口になってくれる利点があります。
赴任者の場合 ― 実務上の判断
物件探しそのものの進め方 ― 日系不動産会社とローカル不動産会社の使い分けについては、韓国赴任 駐在員の家探しで整理しています。
会社が契約主体となる場合でも、対抗力と確定日付の手続きは実際に住む人の名義で行う必要があります。契約形態によって扱いが変わるため、着任前に確認しておきたい点です。
また、更新時の賃料引き上げは直前契約の5%が上限です。保証金を月貰に換算する際の法定転換率は年4.5%(韓国銀行基準金利+2%)で、こちらは更新や条件変更のときに適用され、新規契約には強制されません。提示された条件がこれを超えていないか計算して確認してください。
よくある質問
Q. 結局、チョンセとウォルセのどちらを選ぶべきですか。
A. 2026年時点では、日本人赴任者が選べる物件の多くがウォルセです。チョンセは初期資金が数千万円規模になるうえ、返還リスクを自分で負うことになります。数年で帰任する前提ならウォルセのほうが管理しやすい選択です。
Q. 外国人でも住宅賃貸借保護法の保護を受けられますか。
A. 受けられます。ただし転入届の代わりに出入国管理法上の滞在地変更申告が必要です。この手続きを済ませていないと対抗力が発生しません。
Q. 保証保険に加入できない物件は避けるべきですか。
A. 避けることを強くおすすめします。加入不可は、公示価格に対する保証金の比率や先順位債権が基準を超えていることを意味し、保証機関がリスクが高いと判断したということです。
Q. 契約後に家主が変わった場合どうなりますか。
A. 対抗力を備えていれば、新しい家主に対しても賃借人であることを主張でき、契約期間中の居住と保証金返還の権利は維持されます。手続きを済ませているかどうかで結果が分かれます。
Q. 入居当日に手続きすれば安心ですか。
A. 現行ルールでは対抗力の発生が翌日0時のため、当日に家主が担保融資を実行すると銀行の権利が先行します。契約直後から入居直後にかけて登記簿謄本を再確認することをおすすめします。
困ったときは(相談先)
なお、保証金や生活費を日本から持ち込む・日本へ戻す場合の送金限度については、韓国から日本へお金を送る ── 2026年制度改編と「外国人居住者」の落とし穴で整理しています。
契約や保証金のトラブルに不安がある場合は、日本語が通じる不動産会社や専門家に相談するのが安心です。当サイトでは日本語対応の不動産会社をご紹介しています。
▶ 購入を検討する場合は、毎年かかる保有税もあわせて確認してください。韓国の不動産保有税ガイド ― 6月1日が決める財産税・総合不動産税と取得税【2026年版】



