韓国から日本へお金を送る ── 2026年制度改編と「外国人居住者」の落とし穴
2026年1月、韓国の外国為替制度が25年ぶりの規模で改編されました。ニュースの見出しは「証憑書類なしの海外送金限度が10万ドルへ」「指定取引銀行制度の廃止」。韓国語のニュースを目にして、自分にも当てはまると考えた方が多いかもしれません。
しかし、この緩和は「居住者(外国人を除く)」を対象とした制度です。在韓日本人は外国人居住者として、別の枠組みが適用されます。この記事では、外国人居住者に実際に適用される限度と手続き、そして送金コストの見方を整理します。
2026年1月、何が変わったのか
改編の柱は三つです。
- 証憑書類なしの年間送金限度が10万ドルに一本化 — 従来は銀行権が年10万ドル、非銀行権(フィンテックなど)が年5万ドルと業権ごとに分かれていました。これを全業権合算の年10万ドルへ統合したものです
- 指定取引銀行制度の廃止 — 高額送金のために特定の銀行を指定する必要がなくなり、そのつど条件の良い事業者を選べます
- 韓国銀行の統合管理システム(ORIS)稼働 — 全業権の送金額が実時間で合算管理されます
手続きの簡素化としては大きな変化です。ただし対象を確認する必要があります。
🔴 「外国人居住者」は別枠 ── ここが最重要

銀行連合会や各行の案内では、この無証憑送金の項目名が「居住者(外国人を除く)の無証憑海外送金」と明記されています。外国人や、永住権・市民権を持つ在外同胞はこの枠の対象外です。
では在韓日本人には何が適用されるのか。「その他支給限度」として年間5万ドル相当額の枠があり、この範囲内であれば取得経緯の立証書類を提出せずに送金できます。年間とは、その年の1月1日から12月31日までの累計です。ただし取引外国為替銀行の指定は必要とされています。
5万ドルを超えて送る場合は、営業店で給与立証書類を提出して送金限度を登録する手続きが必要になります。
📌 つまり、「2026年から10万ドルまで自由に送れる」という理解のまま準備を進めると、年の後半に限度で止まります。自分がどちらの枠にいるのかを最初に確認してください。
1回あたりの限度は変わっていない
ここは誤解が多い部分です。1回あたりの無証憑送金限度5,000ドルは、内国人・外国人を問わず維持されています。2026年の改編で変わったのは年間限度のほうであり、1回ごとの上限が撤廃されたわけではありません。
これを超える金額を一度に送る場合は、居住区分にかかわらず証憑書類の提出が必要です。まとまった額を送る予定があるなら、書類を用意したうえで窓口を利用する前提で考えておくとよいでしょう。
給与を日本へ送る場合の実務
韓国での雇用・勤務によって得た国内報酬、自由業による所得、社会保険や年金などの給付は、韓国銀行への申告手続きなしに外国為替銀行で支払いを受けられます(外国為替取引規定第4-4条第1項3号)。
ただし条件があります。指定取引外国為替銀行に、資金の取得経緯を立証する書類(雇用主が確認した給与明細など)を提出して確認を受ける必要があります。
実務上、次の書類を求められることが一般的です。事前に会社の総務・人事に依頼しておくと手続きが一度で済みます。
- 外国人登録証
- 在職証明書
- 給与明細または源泉徴収関連書類
- (金融機関により)出入国事実証明など
⚠️ 必要書類は金融機関ごとに運用が異なります。窓口で二度手間にならないよう、取引銀行に事前確認することをおすすめします。
手数料は「送金手数料」だけでは分からない
「送金手数料無料」という表示を見かけますが、実際に負担するコストは三つの合計です。
- ① 送金手数料 — 目に見える部分。ここだけが比較されがちです
- ② 為替スプレッド — 適用される為替レートと市場レートの差。実はここが最も大きいことが多いです
- ③ 中継銀行手数料・受取手数料 — 銀行のSWIFT送金では、経由する中継銀行が手数料を差し引くことがあります。送った額と受け取った額が合わない原因の多くはこれです

📌 比較するときは「日本の口座に最終的にいくら着金するか」で見てください。①だけを見ると判断を誤ります。
銀行と少額海外送金業者(フィンテック)の違い
韓国では、銀行のほかに少額海外送金業者として登録されたフィンテック事業者が送金サービスを提供しています。指定取引銀行制度が廃止されたことで、送金のたびに事業者を選び直せるようになりました。
| 銀行 | 少額海外送金業者 | |
|---|---|---|
| 着金速度 | 数営業日 | 当日〜翌営業日が多い |
| コスト | 中継手数料が発生しうる | スプレッド込みの総額表示が多い |
| 手続き | 窓口・書類確認あり | アプリ完結型が中心 |
| 向いている場面 | 高額・書類提出を伴う送金 | 少額・定期的な送金 |
なお1回あたりの無証憑限度5,000ドルは、銀行でもフィンテックでも共通です。事業者を変えても1回の上限が広がるわけではない点に注意してください。
※ 本記事では特定の事業者名を挙げていません。手数料とレートは頻繁に変わるため、送金する時点で複数社を実際に比較することをおすすめします。
日本から韓国へ送る場合
逆方向、つまり日本の口座から韓国へ送る場合も、コストの構造は同じです。①送金手数料 ②為替スプレッド ③中継・受取手数料の合計で判断します。
実務上のつまずきは、規制よりも受取人情報の不一致で起きます。
- 英字表記の氏名が口座名義と完全に一致しているか — ミドルネームやスペースの違いで返送されることがあります
- SWIFTコードと支店情報
- 受取通貨 — ウォンで受け取るか外貨で受け取るかで、どこの為替レートが適用されるかが変わります
着金しない場合の照会には時間と手数料がかかります。初回は少額で試すのが確実です。
税務上の注意
限度内であっても、税務の論点は別に存在します。
外国為替取引規定により、年間の送金累計額が1万ドルを超える場合、超過分は国税庁に通報されます。これは違法という意味ではなく、記録が残るということです。また1回あたり5,000ドルを超える送金で証憑書類を提出しなかった場合、金融監督院へ通報される扱いになります。
自分名義の口座への送金と、家族など他人名義への送金では扱いが異なります。金額が大きい場合は贈与税の論点が生じることがあるため、迷う場合は税務の専門家に確認してください。限度が緩和されても、資金の出所と税務の説明責任は変わりません。
▶ 韓国での口座開設については韓国で外国人が銀行口座を開設する方法【2026年版】― 必要書類・おすすめ銀行・カカオバンクまでを、住居の保証金については韓国の住居・家探し完全ガイド ― チョンセ(伝貰)とウォルセ(月貰)、契約から保証金を守る方法まで【2026年版】をあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. 2026年から10万ドルまで送れるようになったと聞きましたが。
A. その緩和の対象は「居住者(外国人を除く)」です。外国人居住者には、その他支給限度として年間5万ドル相当額の枠が適用されます。超える場合は給与立証書類を提出して限度登録を行います。
Q. 1回あたりの限度も撤廃されたのですか。
A. されていません。1回あたりの無証憑送金限度5,000ドルは内国人・外国人とも維持されています。改編で変わったのは年間限度のほうです。
Q. 給与を毎月日本へ送りたいのですが、毎回書類が必要ですか。
A. 指定取引外国為替銀行に取得経緯の立証書類を提出して確認を受ける手続きが必要です。運用は金融機関により異なるため、取引銀行に事前確認してください。
Q. 銀行とフィンテック、どちらが安いですか。
A. 金額と時期によって変わります。送金手数料だけでなく為替スプレッドと中継手数料を含めた「最終着金額」で比較してください。1回あたりの無証憑限度はどちらも同じです。
Q. 送った金額と受け取った金額が違います。
A. 銀行のSWIFT送金では、経由する中継銀行が手数料を差し引くことがあります。手数料の負担区分を送金時に指定できる場合があるため、窓口で確認してください。
Q. 送金すると税務署に把握されますか。
A. 年間の送金累計額が1万ドルを超える場合、超過分が国税庁に通報されます。適法な送金であれば問題はありませんが、資金の出所を説明できる状態にしておくことが大切です。



