韓国の退職金ガイド ― 日本にない法定義務と、1年ルールの落とし穴【2026年版】
韓国では退職金が法律上の義務です。継続勤務1年以上・週の所定労働時間15時間以上の労働者には、勤続1年につき30日分以上の平均賃金を、退職事由の発生日から14日以内に支払わなければなりません。退職の理由は問わず、自己都合でも解雇でも契約満了でも同じです。
日本では退職金は会社の裁量ですので、この違いが人事制度の設計でそのまま効いてきます。支払いが遅れると年20%の遅延利息が発生する点も、あわせて押さえておく必要があります。
根拠となるのは「근로자퇴직급여 보장법(勤労者退職給与保障法)」です。日本のように就業規則や退職金規程で会社が定めるものではなく、要件を満たす労働者には法律上支払い義務が生じます。
誰に支払う義務があるのか
要件は二つです。
- 継続勤務が1年以上であること
- 4週間を平均して週の所定労働時間が15時間以上であること
この二つを満たしていれば、退職の理由は問いません。自己都合の退職でも、解雇でも、契約期間の満了でも、定年でも、退職金の支払い義務が生じます。
日本の感覚で「自己都合だから減額」と考えると実務が止まる部分です。
いくら支払うのか
継続勤務1年につき、30日分以上の平均賃金です。2年勤務していれば60日分になります。
計算式は次の通りです。
退職金 =(1日平均賃金 × 30日)× 総継続勤務日数 ÷ 365
ここでいう平均賃金は、退職日以前3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額です。
ひとつ注意点があります。この方法で計算した平均賃金が通常賃金より少ない場合は、通常賃金を平均賃金として計算します。退職前の数か月が閑散期で残業がなかった、といった事情で平均賃金が下がったときに効いてくる規定です。
この「平均賃金」に何を含めるかで金額が変わります。基本給のほか、時間外手当・皆勤手当・勤続手当などの定期的に支給される手当が入り、定期賞与は直近12か月分の3/12を加えます。一方、結婚祝い金や出張費のような偶発的・実費弁償のものは除かれます。
算入範囲の詳しい一覧と、通常賃金との使い分けは韓国の通常賃金と平均賃金 ― 2024年の判例変更で何が変わったか【2026年版】で整理しています。
14日以内に支払います
支払い期限は退職事由が発生した日から14日以内です。特別な事情がある場合は当事者間の合意で延長できますが、原則は14日です。
期限を過ぎると、翌日から支払日までの遅延日数に対して年20%の遅延利息が発生すると案内されています。金額が大きくなる部分なので、退職者が出る時期は資金繰りとあわせて見ておく必要があります。
受け取る側の時効は退職日から3年です。
日本企業がつまずきやすい点
① 「1年」の数え方
継続勤務期間には、試用期間・産前産後休暇・育児休業なども含まれます。「試用期間は除く」と考えていると計算が合いません。
② 1年目前後の退職
1年に届かなければ支払い義務はありませんが、逆に言えば1年を超えた時点で義務が発生します。契約社員の2年ルールとあわせて、雇用期間の設計時に確認しておく項目です。
③ 月給に含めておく方法は認められません
「毎月の給与に退職金分を上乗せして払っているので、退職時には支払わない」という運用は、原則として認められないと解されています。日本本社から見ると合理的に見える設計ですが、韓国では通用しません。
④ 退職年金制度もあります
退職金を退職時に一括で支払う方式のほかに、退職年金(퇴직연금)制度があります。DB型・DC型などいくつかの類型があり、選択によって会社の負担の出方が変わります。制度設計は個別の事情で判断が分かれる部分なので、導入を検討される場合は労務士など専門家にご確認ください。
まとめ
- 韓国では退職金が法定義務。日本のように会社の裁量ではない
- 勤続1年以上・週15時間以上が要件。退職理由は問わない
- 1年につき30日分以上の平均賃金を、14日以内に支払う
- 継続勤務期間には試用期間や育児休業も含まれる
本記事は2026年8月時点の制度に基づく一般的な情報です。個別の事案については、労務士など専門家にご相談ください。
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