韓国の税金計算書|日本の取引先に伝える要点と期限【2026年版】
韓国で事業者登録をして取引を始めると、取引先から「税金計算書(세금계산서)はいつ発行されますか」と尋ねられる場面が必ず出てきます。日本の請求書やインボイス(適格請求書)に似た書類ですが、電子で発行すると翌日までに韓国の国税庁へデータが送られる点で、性格がかなり違います。
この記事では、韓国の税金計算書の基本と期限、遅れたときの加算税、日本のインボイスとの違いを、2026年10月時点の法令と韓国国税庁の案内に沿って整理します。日本の取引先に発行が必要かどうかの目安も、あわせてお伝えします。
目次
税金計算書とは ― 付加価値税の取引を記録する書類
韓国の付加価値税(VAT)の税率は10%です(付加価値税法第30条)。事業者は、商品やサービスを提供(供給)したとき、税金計算書を作成して相手に発行しなければなりません(同法第32条第1項)。ただし、付加価値税が免除される取引は除きます。免除される取引には、税金計算書ではなく「計算書(계산서)」という別の書類を発行します。
法律が定める主な記載項目は次のとおりです。このほか、大統領令で定める事項があります。
- 提供する事業者の登録番号と、氏名または名称
- 提供を受ける相手の登録番号(相手が事業者でない場合などは、大統領令で定める固有番号または住民登録番号)
- 供給価額(付加価値税を含まない取引金額)と付加価値税額
- 作成年月日
受け取る側にとっても、この書類は重要です。韓国国税庁の案内では、税金計算書が発行されなかった場合、本来受け取るはずだった側は、仕入税額控除が認められない扱いになります。つまり、支払った付加価値税を自分の申告で差し引けないのが原則です。韓国の取引先が発行を強く求めるのはこのためです。
取引先が日本にある場合 ― 発行が不要となる原則と例外
日本の取引先が韓国に事業所(사업장)を持っていない場合、税金計算書は原則として発行しなくてよいとされています。付加価値税法施行令第71条第1項第9号は、国内に事業所のない非居住者または外国法人に提供する物品・サービスについて、税金計算書の発行義務を免除しています。
免除の対象は、あくまで「韓国に事業所のない非居住者・外国法人」です。日本企業の韓国法人(子会社)は韓国の会社であり、この免除には当たりません。日本企業の韓国支店のように、韓国内に事業所がある場合も同じです。
また、韓国に事業所のない取引先であっても、次の場合は免除されません。
- 相手の外国企業が、本国で事業者であることを証明する書類を提示して、発行を求めた場合
- 外国法人の韓国連絡事務所(法人税法第94条の2)に提供する場合
日本企業が韓国に連絡事務所を置いている場合は、上の例外に該当しないか確認してください。
輸出(付加価値税法第21条)や国外で提供するサービス(同法第22条)などには、ゼロ税率(영세율)が適用されます。これらも、一部を除いて税金計算書の発行義務が免除されています(施行令第71条第1項第4号)。
ただし、国内信用状(내국신용장)や購買確認書(구매확인서)による供給のように、ゼロ税率でも税金計算書が必要な取引があります。取引の形ごとに確認が必要です。
税金計算書を発行しない取引でも、代金の請求そのものは別の請求書で行うことになります。なお、韓国の税金計算書は韓国の付加価値税法にもとづく書類で、日本の登録番号(T番号)が載った適格請求書とは別の書類です。日本側の消費税でどう扱うかは、日本の税理士にご確認ください。
※ 発行の要否は取引の形で変わります。個別の取引については、専門家への確認をおすすめします。
日本のインボイスとどこが違うのか
日本でも2023年10月1日から、消費税の仕入税額控除には、原則として適格請求書(インボイス)の保存が必要になりました。インボイスを発行できない免税事業者などからの仕入れには経過措置があり、控除できる割合は2026年9月30日までが80%、2026年10月1日からは70%です(日本の国税庁資料、令和8年5月)。
韓国の税金計算書とは役割が似ていますが、仕組みには次のような違いがあります(2026年10月時点)。
| 項目 | 韓国の電子税金計算書 | 日本の適格請求書(インボイス) |
|---|---|---|
| 発行する人 | 課税事業者(簡易課税者〈간이과세자〉のうち直前年の供給代価が4,800万ウォン未満の事業者などは、税金計算書ではなく領収証を発行) | 登録を受けた適格請求書発行事業者のみ |
| 記載する番号 | 事業者登録番号(提供する側と相手方。相手が事業者でない場合は別の番号) | 登録番号(法人は「T+法人番号」、個人などは「T+13桁」) |
| 国税庁への送信 | 発行日の翌日までに送信 | 求められていない(交付と写しの保存が義務) |
| 様式 | 国税庁の標準に沿った電子署名付きデータ | 法令上の様式はなく、名称も問わない |
| 保存 | 電子税金計算書そのものを紙で保管する必要はない(韓国国税庁の案内)。帳簿・証憑の保存は別途 | 交付した写しを7年間保存 |
| 誤りの訂正 | マイナスの「修正税金計算書」を発行し、必要なら正しいものを発行し直す | 修正した適格請求書を交付 |
| 税率 | 10%の単一税率 | 標準10%・軽減8% |
保存の範囲は帳簿や証憑の扱いとあわせて確認が必要です。詳しくは税理士へのご確認をおすすめします。
日本側には、「韓国の税金計算書は、取引の記録がそのまま税務当局に届く仕組みです」と説明すると、実態を的確に伝えられます。日本の担当者は「請求書の一種」と受け止めがちですが、韓国では発行した時点で取引の記録が当局に残ります。
電子発行が義務になる事業者
電子税金計算書の発行は、法人事業者には2011年1月から義務づけられています。個人事業者は、直前の年の供給価額(課税分と免税分の合計)が事業所ごとに8,000万ウォン以上の場合、2024年7月1日以降、電子発行が義務となります。
個人事業者の場合、供給価額が基準額以上になった年の翌年の7月1日(第2期課税期間の初日)から、以後は継続して電子発行が必要です。以前は1年ごとに判定し直していましたが、2023年7月以降は「一度対象になれば継続」に改められました。修正申告などで基準額以上になった場合は、修正申告などをした日が属する課税期間の、次の課税期間から義務が始まります。
義務のない事業者も、電子税金計算書を選んで発行できます(付加価値税法第32条第5項)。発行には国税庁が無料で運営する「ホームタックス(홈택스)」が使え、ホームタックスで発行すると、相手へのメール送付と国税庁への送信が自動で行われます。
期限は「提供時」と「翌月10日」、訂正はマイナス発行で
発行の期限は、原則として商品やサービスを提供した時点です(付加価値税法第34条第1項)。ただし、取引先ごとに1か月分(1日から末日まで)を合計し、末日を作成日とする「月合計」の方式を取る場合などは、提供した月の翌月10日まで発行できます。10日が土曜日または公休日(日曜日・祝日など)にあたるときは、その次の営業日が期限です(同条第3項)。
電子で発行した場合は、発行日の翌日までに国税庁へ送信する必要があります。
もう一つ、日本ではあまり意識されない点があります。韓国国税庁の案内では、電子署名付きの税金計算書のデータが相手のメール受信箱(またはホームタックス)に届いた時点で「発行完了」となります。発行した旨を知らせるショートメッセージやリンクだけでは、発行が完了したことになりません。相手の受信用メールアドレスを正確に把握しておくことが、期限を守るうえでの前提になります。なお、相手がメールアドレスを持たない、または指定しない場合は、国税庁の発行システムが受信先とみなされます。
日本本社に説明するときは、「月末締めの取引でも、税金計算書の期限は翌月10日です」と最初に伝えておくと、その後の調整がスムーズです。日本側の社内承認に時間がかかり10日を過ぎると、韓国側で加算税の対象になり得るからです。
一度発行した税金計算書は、日本の請求書のように差し替えて済ませることはできません。韓国国税庁の案内では、理由に応じて次のように扱います。
- 記載の誤り(錯誤):元の分を打ち消すマイナスの税金計算書1枚と、正しい税金計算書1枚を発行
- 二重発行:マイナスの税金計算書1枚を発行
- 供給価額の増減:増減した分だけプラスまたはマイナスの税金計算書1枚を発行(変動した日の翌月10日まで)
- 契約の解除:マイナスの税金計算書1枚を発行(解除した日の翌月10日まで)
- 返品:返品された分のマイナスの税金計算書1枚を発行(返品された日の翌月10日まで)
値引きや返品、契約の解除があったときは、日本側から「請求書を出し直してください」と頼まれても、韓国側ではマイナス発行という手順を踏むことになります。この点を先に共有しておくと、行き違いが減ります。
遅れたとき・出さなかったときの加算税
韓国国税庁の案内にもとづく加算税率は、次のとおりです(いずれも供給価額に対する率、2026年10月時点)。表の「確定申告期限」は、提供した時期が属する課税期間の、付加価値税の確定申告期限を指します。
| 区分 | 発行した側 | 受け取った側 |
|---|---|---|
| 未発行(確定申告期限までに発行しない) | 2% | 仕入税額控除不可 |
| 遅延発行(期限後、確定申告期限までに発行) | 1% | 0.5% |
| 紙で発行(電子発行義務者の場合) | 1% | ― |
| 遅延送信(翌日を過ぎ、確定申告期限までに送信) | 0.3% | ― |
| 未送信(確定申告期限までに送信しない) | 0.5% | ― |
※ 受け取った側の「仕入税額控除不可」は加算税ではなく、控除そのものが認められないという意味です。
加算税には違反の種類ごとに上限が設けられており、5,000万ウォン(中小企業基本法上の中小企業に当たらない企業は1億ウォン)です。ただし故意の違反には上限がありません。また、発行の違反に加算税が課される場合、送信の違反の加算税が重ねて課されることはありません。
受け取った側も無関係ではありません。遅延発行の税金計算書を受け取ると、受け取った側にも0.5%が課されます。韓国の取引先が期限を厳しく確認するのは、こうした仕組みがあるためです。
まとめ ― 日本側と話す前の確認リスト
- 取引先は韓国に法人(子会社)・支店・連絡事務所などの事業所を持っているか
- 相手方の事業者登録番号と、税金計算書の受信用メールアドレスを受け取ったか
- 月合計で発行するなら、締め日と「翌月10日」の期限を日本側の承認フローに組み込んだか
- 値引き・返品・契約解除があったとき、マイナス発行になることを日本側に伝えたか
- 自分が電子発行の義務者か(法人か、個人なら直前の年の供給価額が8,000万ウォン以上か。一度対象になれば継続)
韓国の税金計算書は、取引の記録が翌日までに国税庁へ届く仕組みで、期限は原則として提供時、月合計なら翌月10日です。日本側に説明するときは、この二点と、韓国に事業所のない日本の取引先には原則として発行義務がないことを、先に伝えておくと行き違いを減らせます。
この記事は2026年10月時点の法令と、韓国国税庁・日本の国税庁の公開資料にもとづく一般的な情報です。
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参考
- 韓国国税庁「電子(税金)計算書 ― 概要及び推進背景(개요 및 추진배경)」
- 韓国国税庁「発行義務対象者(발급의무대상자)」
- 韓国国税庁「発行方法及び発行手続(발급방법 및 발급절차)」
- 韓国国税庁「発行時期及び発行・送信期限(발급시기 및 발급∙전송기한)」
- 韓国国税庁「特典と加算税(혜택과 가산세)」
- 韓国国税庁「修正税金計算書の発行方法(수정세금계산서 발급방법)」
- 国家法令情報センター「付加価値税法(부가가치세법)」第30条・第32条・第34条・第36条
- 国家法令情報センター「付加価値税法施行令(부가가치세법 시행령)」第71条
- 国税庁(日本)「インボイス制度について」
- 国税庁(日本)「適格請求書等保存方式の概要 ‐インボイス制度の理解のために‐」(令和8年5月)
韓国でのビジネス、一人で調べていませんか
KOREA Benriを執筆している佐々木和義は、自身で韓国法人の設立(外国人投資申告から投資ビザ取得まで)、許認可、商標、不動産契約の一切を経験しています。日韓の広告実務20年、韓国政府機関公認 外信記者。
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