韓国の契約社員(期間制勤労者)ガイド ― 2年ルールと無期転換、日本との違い【2026年版】
韓国で現地スタッフを雇う日本企業がまず戸惑うのが契約社員の扱いである。日本の感覚で「とりあえず契約社員で様子を見る」と考えると、韓国では2年で法律の壁に突き当たる。ここでは用語の対応関係から、2年ルール、例外、派遣との違いまでを整理する。
契約社員は韓国語で何と言うか
日本の「契約社員」に相当する韓国語は계약직(契約職/ケヤクチク)である。法律上の正式名称は기간제 근로자(期間制勤労者)で、「期間の定めのある勤労契約を締結した勤労者」を指す。根拠法は기간제법(期間制法) ── 正式には「期間制及び短時間勤労者保護等に関する法律」だ。
| 日本語 | 韓国語(読み) | 備考 |
|---|---|---|
| 契約社員 | 계약직(ケヤクチク) | 日常・実務で最も使う言い方 |
| 期間制勤労者 | 기간제 근로자(キガンジェ・クンロジャ) | 法律上の名称 |
| 正社員 | 정규직(チョンギュジク/正規職) | |
| 無期契約職 | 무기계약직(ムギケヤクチク) | 2年超過で転換した状態 |
| 派遣社員 | 파견직(パギョンジク/派遣職) | 別の法律(派遣法)が適用 |
【核心】2年ルール ── 日本の5年より短い
韓国の期間制法第4条は、期間制勤労者の使用を通算2年までに制限している。2年を超えて使用すると、手続きなしで自動的に「期間の定めのない勤労契約」とみなされる。以後、契約期間の満了を理由に雇用を終了すれば不当解雇になり得る。
日本との違いは2点ある。
- 期間が短い ── 日本の無期転換ルール(労働契約法)は通算5年。韓国は2年で、体感的にはあっという間である
- 自動でみなされる ── 日本は労働者が無期転換を申し込んで成立するが、韓国は2年を超えた時点で法律上当然に無期とみなされる。会社の意思も本人の申込みも関係ない
短期契約を反復更新しても、空白なく続いていれば全期間を合算して2年を計算する。「11か月契約を3回」のような設計は通用しない。
2年を超えて契約社員のままでいられる例外
期間制法とその施行令は、2年制限の例外を限定的に列挙している(計19類型)。実務で関係が深いのは次のものだ。
- 満55歳以上の高齢者 ── ただし判定は契約締結または更新の時点の年齢。勤務中に55歳になった場合は該当しない
- 博士学位者・弁護士等の専門資格者、政府告示基準を満たす高所得専門家
- 事業の完了・特定業務の完成に必要な期間を定めた場合 ── プロジェクト型。ただし会計年度単位の形式的な更新は該当しないと判断された事例がある
例外は複雑で、標準職業分類や当該年度の告示まで確認が必要になる。「例外に当たるだろう」という見込み運用は危険である。
「更新期待権」── 2年以内でも切れないことがある
判例は、契約が反復更新され、更新を期待させる事情(更新手続きの慣行、評価基準の存在など)がある場合、勤労者に更新への正当な期待権を認める。この場合、合理的理由のない更新拒絶は不当解雇と同様に扱われる。
つまり「2年以内なら満了で自由に終了できる」とは限らない。更新の可否を判断する評価・審査手続きを文書で残しておくことが実務上の防衛線になる。
派遣は別制度 ── 32業務・2年で直接雇用義務
派遣(파견)は派遣勤労者保護法という別の法律が適用され、期間制よりさらに厳しい。
- 対象業務が限定 ── 専門知識・技術等を考慮して施行令が定める32業務のみ。製造業の直接生産工程業務は原則禁止(日本のように製造ラインへ広く派遣を入れることはできない)
- 期間は最長2年 ── 原則1年、合意により1回1年まで延長
- 2年超過は直接雇用義務 ── 使用事業主に当該派遣勤労者を直接雇用する義務が発生する。違法派遣(許可外業務など)も同様
日本の感覚で「派遣で長く回す」設計は、韓国では最初から選択肢にない。
契約社員にも適用されるもの
雇用形態が契約職でも、次は正社員と同じく適用される。
- 退職金 ── 継続勤労1年以上で支給義務(週15時間未満の超短時間勤労者は除く)
- 4大保険 ── 国民年金・健康保険・雇用保険・産災保険
- 年次有給休暇・週休手当
- 最低賃金 ── 2026年は時給10,320ウォン(月209時間換算で約215万6,880ウォン)。国籍・雇用形態を問わず全勤労者に適用
また期間制法は、同種・類似業務の正社員と比べた差別的処遇を禁止している。「契約社員だから賞与なし」といった設計は、それ自体が是正命令の対象になり得る。
日本企業が実際につまずくポイント
- 会計年度単位の反復更新 ── 1年契約を毎年更新して2年を超え、無期とみなされてから満了通告 → 不当解雇の典型パターン
- 短い空白を挟んだ再契約 ── 形式的な退職・再入社を挟んでも、実態が継続していれば合算される
- 2年直前での雇い止め ── 適法ではあるが、更新期待権が成立していれば争われる。手続きと理由の記録が必要
- 本社ルールの持ち込み ── 日本の5年ルール・派遣自由化の感覚のまま制度設計をすると、韓国では2年・32業務の壁に当たる
よくある質問
Q. 契約社員は韓国語で何と言いますか。
A. 日常的には계약직(ケヤクチク)、法律上は기간제 근로자(期間制勤労者)です。求人・契約書では両方の表記を見かけます。
Q. 2年を1日でも超えたらどうなりますか。
A. 期間制法第4条により、超過した時点から期間の定めのない勤労者とみなされます。以後の「契約満了」による終了は不当解雇になり得ます。
Q. 日本人スタッフを韓国で契約社員として雇う場合も同じですか。
A. 韓国で勤労契約を結ぶ以上、国籍に関係なく韓国の労働法が適用されます。最低賃金・退職金・4大保険も同様です。
Q. 無期契約職(무기계약직)は正社員と同じですか。
A. 雇用期間の定めがない点は同じですが、賃金体系・職群が別に設計されている企業もあります。ただし合理的理由のない差別的処遇は禁止されています。
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