韓国の知的財産 実務ガイド ― 商標の先取り・写真の著作権・AI学習【2026年版】
韓国と取引する日本企業が知的財産でつまずくのは、たいてい次の3つである。商標を先に取られる、自社の写真や記事を無断で使われる、そして自社コンテンツがAIの学習に使われる。制度の解説ではなく、この3つに絞って実務を整理する。
商標 ── 韓国は「先に出した者」が勝つ
韓国は先願主義である。日本でどれだけ長く使っていても、韓国で先に出願されればその者に権利が生じる。日本企業の商標が韓国で第三者に先取りされる例は珍しくない。
いつまでに出すか ── 優先権は6か月
日本での出願日から6か月以内に韓国へ出願すれば、条約に基づく優先権を主張できる。日本の出願日が韓国でも出願日として扱われるため、この6か月の間に第三者が出願していても対抗できる。
韓国進出を検討し始めた時点で出願するのが原則である。「売れてから」では遅い。
🔴 異議申立ての期間が30日に短縮された
審査を通った出願は出願公告され、その間に第三者が異議を申し立てられる。この期間が従来の2か月から30日に短縮された。
公告を見逃せば異議の機会そのものが消え、登録後に無効審判で争うことになる。手間も費用も一段上がる。自社ブランドの韓国での公告を継続的に監視するか、代理人に監視を委ねておきたい。
すでに先取りされていたら
- 公告期間中なら異議申立て
- 登録後なら無効審判・取消審判。相手が使用していない場合は不使用取消が有力な選択肢になる
- 交渉で譲渡を受ける方法もあるが、先取りを前提にした請求額を提示されることがある
特許庁(知識財産処)系の海外進出企業向けの模倣品・無断先取り商標 対応ガイドが公開されている。
写真・記事の著作権
著作権は登録しなくても創作した時点で発生する。出願・登録が要る商標とはここが違う。
- 保護期間 ── 著作者の死後70年。業務上の著作物(法人名義)は公表後70年
- 外国人の著作物 ── 条約により保護される。日本で保護されている著作物を韓国で使う場合も、原則として韓国の著作権法が適用される
- 登録の意味 ── 韓国著作権委員会への登録は任意だが、創作時期や著作者の推定が働くため、争いになったときの立証が楽になる
実務では、商品写真・店舗写真・紹介記事が無断転載される例が多い。掲載を許諾する場合は使用範囲(媒体・期間・改変の可否)を書面で決めておくこと。「一度渡した写真がいつまでどこで使われるか」でもめるのはたいていここである。
【2026年版】AI学習とクローリング
自社のコンテンツが生成AIの学習に使われることへの関心が高まっている。韓国では2026年2月26日、文化体育観光部と韓国著作権委員会が「生成AIの著作物学習に関する著作権法上の公正利用ガイド」を公表した。
- 公正利用にあたるかを判断する要素と事例が示された
- 商業目的であること、ウェブクローリングで収集したことだけを理由に、一律に公正利用から排除されるわけではないと明記された
法改正はまだ途中である。2026年第3四半期までに著作権法改正案を国会へ提出する方針が示されており、「学習禁止表示(オプトアウト)」の活用と、権利者が不明な著作物についての収益配分の仕組みが検討されている。TDM(テキスト・データマイニング)の規定を盛り込む改正案は提出されたものの、まだ成立していない。
実務として今できるのは次の2点である。
- 自社サイトの意思表示を残す ── robots.txt や利用規約で学習利用の可否を明示しておく。オプトアウトが制度化されたときに効いてくる
- 掲載契約に一文を入れる ── 他社媒体に写真・記事を提供する場合、AI学習への提供可否を契約で決めておく
よくある質問
Q. 日本で商標登録していれば韓国でも守られますか。
A. 守られません。商標権は国ごとです。韓国で使うなら韓国で出願が必要です。日本の出願から6か月以内なら優先権を主張できます。
Q. 韓国の会社に商品写真を渡すとき、注意することは。
A. 使用範囲を書面で決めてください。媒体・期間・改変の可否・第三者への再提供の可否です。口頭で渡すと、契約終了後も使われ続けることがあります。
Q. 自社の写真が韓国のサイトで無断使用されていました。
A. まず証拠の保全(該当ページの保存、掲載日の記録)です。そのうえで削除要請、それでも応じない場合は法的手続きへ進みます。韓国著作権委員会に登録しておくと立証が容易になります。
Q. 記事広告の写真の権利は、掲載後どちらに残りますか。
A. 撮影者・提供者によります。取材で媒体側が撮影した写真と、広告主が提供した写真では扱いが異なるため、掲載前に確認しておくべき点です。KOREA Benriでは取材写真の使用条件を事前にご案内しています。
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