韓国のオンドル(床暖房)― 仕組みと外出モード、暖房費の考え方
韓国の住まいで日本と最も違うのがオンドル(온돌)である。エアコンや石油ストーブで空気を暖めるのではなく、床そのものを暖めて部屋全体を暖める方式で、現代のアパートでも標準装備だ。仕組みを知らないと、暖房費が跳ね上がったり、水道管を凍らせたりすることになる。
もともとは竈の煙で床を暖める仕組みだった
かつてのオンドルは、台所の竈(かまど)で煮炊きする際に出る煙と熱を床下に通し、床を暖めるものだった。火災を避けるため、オンドル部屋の床は板石を敷き、その上に油紙を貼っていた。
この構造には制約がある。竈の熱で床下を暖める以上、2階より上の床は暖められない。韓国の伝統家屋がほぼ平屋なのは、この暖房方式と結びついている。
現代のオンドルは温水式の床暖房
中高層アパートが主流になった現在、旧来の方式は構造的に成り立たない。いま「オンドル」と呼ばれているのは温水式の床暖房である。床下に配管を通し、ボイラーで沸かした湯を循環させて床を暖める。
熱源は電気もあるが、ガスや灯油が多い。室温の調整ができ、多くは風呂・シャワー・台所の給湯ボイラーとセットで組み込まれている。つまり暖房と給湯が同じ設備でまかなわれている。
操作パネルは室内の壁に付いていることが多く、「実内(실내)=室温基準」「温水(온수)=給湯のみ」「外出(외출)」といったモードを選ぶ形式が一般的だ。
「外出モード」は切るためではなく、凍結を防ぐためにある
ここが在韓日本人が最もつまずくところだ。冬にオンドルを完全に切ってはいけない。
ソウルは氷点下10度前後まで下がるため、暖房を止めると室内の水道管が凍結しかねない。破裂すれば修理費がかさむうえ、集合住宅では階下への漏水にもなる。
就寝時や外出時は、切るのではなく「外出」モードにしておく。最低限の温度を保ちながら消費を抑えるためのモードで、節約のための機能であると同時に、凍結防止のための機能でもある。長期で家を空けるときは、加えて水道管の水抜きをしておくと確実だ。
暖房費は使い方で大きく変わる
温水式の床暖房は、コンクリートの床を暖めるまでに時間がかかる。こまめにオン・オフを繰り返すと、そのたびに暖め直すことになり、かえって費用がかさむ。一定の温度を保つ運用のほうが結果的に安く済むことが多い。
集合住宅では暖房費が管理費(관리비)に合算されて請求される方式が一般的で、使用量に応じて冬場の管理費が大きく上下する。日本の感覚で「暖房は使った分だけ電気代」と考えていると、冬の請求額に驚くことになる。
寝具は薄いほうが理にかなっている
床からの熱を体に伝える暖房なので、布団や座布団は薄いものが使われてきた。日本の厚い敷布団を床に敷いて寝ると熱が伝わらず、そのうえ体が沈まないため、一晩で節々が痛くなるということが起こる。畳に厚い布団という日本の習慣とは前提が違う。
近年はベッドを使う人が増えたが、床を暖めて暖をとるという習慣は残っており、温水式の敷き毛布が人気だ。ベッドの上でもオンドルに近い暖まり方を再現する、という発想である。
よくある質問
Q. 冬に留守にするとき、オンドルを切ってもいいですか。
A. 切らないでください。水道管が凍結する恐れがあります。「外出」モードにして最低限の温度を保ちます。数日以上空ける場合は水抜きもしておくと確実です。
Q. こまめに消したほうが節約になりますか。
A. 逆になることが多いです。床を暖め直すのにエネルギーがかかるため、一定の温度を保つほうが安く済む傾向があります。
Q. 暖房費はどう請求されますか。
A. 集合住宅では管理費に合算されるのが一般的です。冬場は使用量によって管理費が大きく上がります。
Q. 日本から布団を持ってきても使えますか。
A. 使えますが、厚い敷布団は床の熱が伝わらず、体も沈まないため寝心地がよくないことがあります。現地では薄い寝具が一般的です。
Q. ベッドだとオンドルの意味がないのでは。
A. 部屋全体が暖まるので無意味ではありません。床の暖かさが欲しい場合は、温水式の敷き毛布を使う人が多いです。


