ソウルで日本人が多く住むエリア ― 二村洞・麻浦・新村の選び方【2026年版】
ソウルで住む場所を決めるとき、日本人駐在員の選択肢は実質的にいくつかのエリアに絞られる。決め手になるのは日本人学校のスクールバスと通勤の便で、家族帯同か単身かで答えが変わる。ここでは日本人が多く住むエリアを、それぞれの事情とあわせて整理する。
東部二村洞(トンブイチョンドン)
日本人が最も多いエリアである。「東部二村洞」は通称で、行政上は二村1洞を東部二村洞、二村2洞を西部二村洞と呼び分けている。かつて「リトルトーキョー」と呼ばれた時期もあり、ピーク時にはソウル在住日本人の4分の1以上がここに住んでいた。
最大の理由はソウル日本人学校のスクールバスが発着する唯一の地点だということだ。日本人を受け入れる幼稚園もあり、幼稚園児から中学生までを帯同する駐在員が集まる。
4号線・京義中央線の二村駅の北側には国立中央博物館、団地の南側には漢江公園が隣接する。日本語が通じる医院や歯科、日本の食材を置くスーパーもあり、韓国語ができなくても生活に困りにくい。
団地としてはハンガラム(한가람・2,306世帯)とカンチョン(강촌・1,001世帯)が規模が大きく、駅にも近い。不動産会社が日本人向けに紹介することが多いのもこの二つで、結果として日本人世帯が集まりやすい構図になっている。
ただしソウル市民から見れば高級住宅地で、家賃も物価も他地域より割高だ。会社が住居費を負担してくれる前提でないと選びにくい面がある。隣接する新龍山や三角地に住む人も増えている。
もうひとつ、住んでみないと気づきにくい点がある。ソウルの日本人コミュニティは狭く、同じ団地のエレベーターや近所の店で、仕事や学校で顔を合わせる人と出くわすことが珍しくない。それを煩わしく感じる人は、あえて他エリアを選ぶこともある。
麻浦・孔徳(マポ・コンドク)
東部二村洞に次いで日本人駐在員が多い。孔徳駅は地下鉄5号線・6号線・空港鉄道・京義中央線が交わる乗換駅で、バス路線も多く、市庁・乙支路周辺や汝矣島への通勤に便利だ。
空港鉄道で金浦空港にも仁川空港にも乗り換えなしで行ける点は、出張が多い人には大きい。大型マートや市場、飲食街もそろっており、生活利便性は高い。
物件のタイプも東部二村洞とは違う。マポ・ハンファ・オベリスク(마포한화오벨리스크)のように、地下鉄駅に直結してアパートとオフィステルが同居する複合団地があり、単身赴任者はオフィステルを選ぶことも多い。地下に商業施設が入っているため、冬でも外に出ずに買い物を済ませられる。
注意したいのは学校で、ソウル日本人学校は同じ麻浦区内(上岩洞のDMC)にあるが、麻浦の中心部から通学する手段はない。区が同じでもスクールバスの発着地は東部二村洞だけ、という点を取り違えないようにしたい。
新村・弘大(シンチョン・ホンデ)
新村は学生街として知られ、韓国語を学ぶ日本人に人気の延世大学・梨花女子大学・西江大学がある。ソウル中心部と西部・空港を結ぶバス路線が集まる。
弘大は新村より家賃・物価がやや高めだが、地下鉄2号線・6号線、京義中央線、空港鉄道が通り利便性が高い。
留学生は留学先の近くで住まいを探す傾向があり、新村や建大周辺が典型だ。そして韓国で就職した後も、留学生時代に住んでいたエリアの近くに住み続ける人が多い。
その他のエリア
上記以外に日本人がまとまって住むエリアはない。明洞や鐘路、江南の瑞草・江南・蚕室など、職場の近くで選ぶ人が多い。単身者は通勤の便を優先する傾向が明確だ。
日本人学校に近い上岩洞やDMCに住む日本人も増えている。駐在を終えて韓国で転職した人などは、それぞれ気に入った場所に住んでおり、居住地は多様である。
選び方の目安
- 小中学生を帯同する → 東部二村洞(スクールバスの発着地)
- 単身・通勤重視 → 職場の近く。市庁・乙支路方面なら孔徳、江南勤務なら江南各所
- 出張が多い → 孔徳(空港鉄道で両空港に直通)
- 語学留学 → 新村・弘大など学校の近く
なお住所表記は、ソウル市が地番から道路名(道路名住所)へ切り替えているが、公的機関は道路名、民間では地番と道路名が混在している。物件情報を見るときに両方が出てくるのはこのためだ。
実際の契約手続き、チョンセ(伝貰)とウォルセ(月貰)の違い、保証金の守り方については別記事で詳しく扱っている。エリアを決めたら、そちらもあわせて確認してほしい。
コラム ── 東部二村洞に日本人が集まる理由
国交回復直後の1970年代、日本企業の韓国進出が始まった。携帯電話がない時代、日本大使館などからの伝達は無線に頼っていた。南山から発信される電波が届くエリアであること、そして梨泰院や漢南洞がすでに欧米人の居住区だったことから、住宅地開発が始まったばかりの東部二村洞が日本人駐在員の居住区として選ばれた。
携帯電話が普及した現在、必ずしも東部二村洞に住む必要はない。それでも多くの日本人が住み続けているのは、日本語が通じる環境と学校への足が、半世紀かけてここに積み上がったからである。
よくある質問
Q. 子どもを日本人学校に通わせたい場合、どこに住むべきですか。
A. 東部二村洞です。ソウル日本人学校のスクールバスが発着する唯一の地点で、それが同エリアに日本人が集中する最大の理由です。
Q. 日本人学校は麻浦区にあるのに、麻浦に住めば通学できませんか。
A. できません。学校は麻浦区上岩洞(DMC)にありますが、麻浦の中心部から通学する手段はありません。スクールバスの発着地は東部二村洞だけです。
Q. 東部二村洞は家賃が高いと聞きました。
A. ソウル市内では高級住宅地にあたり、家賃も物価も割高です。会社が住居費を負担する前提でないと選びにくいのが実情です。
Q. 単身赴任ならどこがいいですか。
A. 職場の近くを選ぶ人が多数です。市庁・乙支路方面なら孔徳、江南勤務なら江南各所が候補になります。出張が多いなら空港鉄道の通る孔徳が便利です。
Q. 韓国語ができなくても住めますか。
A. 東部二村洞であれば、日本語が通じる医院や歯科、日本の食材を扱うスーパーがあり、生活に困りにくい環境です。



