在韓日本人のための危機管理・緊急時ガイド
韓国に暮らす日本人にとって、緊急時への備えは特別なことではなく「登録」「情報の受け取り方」「避難場所の把握」の3点を平時に済ませておくことに尽きる。ここでは在留届などの届出、大使館からの情報を受け取る方法、待避所の確認、そして出国手段について整理する。
まず済ませておく:在留届とたびレジ
海外に3か月以上滞在する日本人には、旅券法により在留届の提出が義務づけられている。オンライン届出システム「ORRネット」から提出でき、住所や家族構成が変わったときは変更届を出す。
3か月未満の滞在であれば、外務省の海外安全情報配信サービス「たびレジ」に登録しておく。いずれも登録しておくことで、緊急時に大使館からの連絡が届く経路が確保される。出張や短期滞在でも登録しておいて損はない。
登録内容が古いままだと、いざというときに連絡が届かない。転居や帰国、家族の増減があったタイミングで更新する習慣をつけておきたい。
大使館からの情報を受け取る
危険度が上がる事象が発生した場合、在留届やたびレジの登録者には大使館から携帯電話へメッセージが届く。裏を返せば、登録していなければ何も届かないということだ。
また在大韓民国日本国大使館のウェブサイトには「安全マニュアル」が掲載されており、日本人居住者が多い地域の待避所リストなども載っている。平時に一度目を通しておくと、いざというときに探し回らずに済む。
待避所(シェルター)を把握しておく
韓国には全国に多数の民防衛待避所が指定されており、地下鉄駅、地下商店街、オフィスビルの地下、アパートの地下駐車場などに「待避所」と表示されている。
場所は行政安全部の「安全ディディムドル(안전디딤돌)」アプリや国民災難安全ポータルで検索できるほか、主要な地図アプリやポータルサイトでも調べられる。平時にアプリを入れておけば、外出先でもすぐ確認できる。
ただし過度な期待は禁物だ。広いスペースやAED、防毒マスクなどを備えている施設もあるが、数はさほど多くなく、水や食料は基本的に備蓄されていない。あくまで一時的な避難場所と割り切り、必要なものは自分で持ち出す前提で考えておきたい。
確認しておくべきは、自宅・職場・子どもの学校といった日常の生活動線上にある待避所だ。通勤・通学ルート沿いに何があるかを、平時に一度歩いて確かめておくと心強い。
出国手段について知っておくこと
緊急時の出国手段は、大きく空路と海路になる。ただしどちらも平時と同じようには機能しないという前提で考える必要がある。
空路については、状況によって空港が使用できなくなる可能性がある。日韓路線に就航している日本の航空会社は限られており、1日あたりの座席数には上限がある。海路については、釜山と下関・福岡・対馬などを結ぶフェリーが毎日就航している。ただしソウルから釜山への移動手段自体が混雑する可能性を織り込んでおく必要がある。
いずれにせよ、韓国には常時5〜6万人規模の日本人が滞在しているのに対し、短期間で出国できる人数はその一部にとどまる。全員が同時に動けるわけではないという現実は理解しておきたい。
オープンチケットは有効か
備えのひとつとして、搭乗区間だけを指定し日時を予約せずに購入する「オープンチケット」(1年間有効)を持っておく方法がある。ただし日韓路線は割引運賃が多いため、何も起きなければ割高になり、毎年買い替える必要が生じる。
現在の航空券はEチケットが主流で、予約も決済もインターネット経由が基本だ。システムが正常に機能しない状況では、この経路自体が使えなくなる可能性がある。オープンチケットを持っていれば、電話など別の手段で手続きできる余地が残るかもしれない、というのが実務上の期待値だ。
一方で、日本政府が手配する航空機については、到着後に支払う旨の誓約をすれば搭乗できるなど、チケットがなくても対応されるケースがある。オープンチケットは搭乗を保証するものではなく「お守り」に近いと考えるのが妥当だろう。いずれの手段でも、指定された時刻までに指定場所に到着することが大前提になる。
移動できないときの選択肢
移動そのものが困難な状況では、無理に動き回らずその場で持ちこたえるという選択肢もある。待避所の場所を把握し、数日分の水・食料・常備薬・現金を自宅に備えておけば、判断の幅が広がる。
現金については、決済システムが使えない事態も想定して、少額でも手元に置いておくと安心だ。これは緊急時に限らず、大規模な通信障害や停電の際にも役立つ。
よくある質問
Q. 在留届は必ず出さないといけない?
A. 海外に3か月以上滞在する場合、旅券法により提出が義務づけられている。オンラインの「ORRネット」から提出できる。
Q. 短期滞在でも登録できる?
A. 3か月未満なら外務省の「たびレジ」に登録する。出張や旅行でも登録しておけば緊急時の情報が届く。
Q. 待避所には水や食料がある?
A. 基本的に期待できない。一時的な避難場所と割り切り、必要なものは自分で持ち出す前提で考えたい。
Q. 待避所はどこで確認できる?
A. 行政安全部の「安全ディディムドル」アプリや国民災難安全ポータル、主要な地図アプリで検索できる。日本語では、在大韓民国日本国大使館のウェブサイトに掲載されている「安全マニュアル」に、日本人居住者が多い地域の待避所リストが載っている。
Q. オープンチケットは持っておくべき?
A. 搭乗を保証するものではない。決済システムが使えない状況で別の手続き経路が残る可能性がある、という程度の位置づけだ。毎年の買い替えコストと見合うかで判断したい。
Q. 何から始めればいい?
A. まず在留届またはたびレジの登録と内容の最新化。次に生活動線上の待避所の確認。この2つを済ませておけば大きく違う。


