韓国のキムジャン ― ユネスコ無形文化遺産と、おすそ分けとの付き合い方
11月下旬から12月初旬にかけて、韓国ではキムジャン(김장)の季節を迎える。冬から春にかけて食べるキムチを一度にまとめて漬け込む行事で、2013年にユネスコの無形文化遺産に登録されている。登録されたのはキムチという食品ではなく、家族や近所が集まって漬け、分かち合うという営みそのものだ。在韓日本人にとっては「おすそ分けをいただく側」として関わることが多い。
もともとは冬の保存食を確保する行事だった
野菜が手に入らない冬に備え、白菜や大根をまとめて漬け込んでおく——それがキムジャンの出発点である。家族や親戚が集まり、女性を中心に一日がかりで作業する光景が、長く韓国の初冬の風物詩だった。
年中どんな野菜でも手に入る現在、保存食としての必要性は薄れている。それでも行事として続いているのは、共同で作業し、分け合うこと自体に意味があるからだといえる。ユネスコがキムチではなく「キムジャン文化」を登録したのも、その点を評価してのことだ。
時期が決まっているのは気温の都合
キムジャンの時期が11月下旬から12月初旬に集中するのには理由がある。気温が下がりすぎると白菜が凍り、高すぎると発酵が進みすぎる。ちょうどよく低い時期が、この数週間なのだ。
地域によって適期は変わり、南に行くほど遅くなる。ソウルでは11月下旬あたりが目安になる。
おすそ分けの量は「日本の感覚」を超える
キムジャンでは自分たちが食べる以上に漬け込む家庭が多く、近所や職場に配られる。在韓日本人がこのおすそ分けにあずかることも珍しくない。
ここで戸惑うのが量である。もともと分け与える文化なので、渡されるのはとても食べきれる量ではない。しかも年中野菜が手に入るいまは、毎月のように漬けてその都度おすそ分けをくれる人すらいる。
いただいたキムジャンキムチを食べきらないまま1年が過ぎ、次のキムジャンキムチがやってくる——冷蔵庫に食べきれないキムチが溜まっていく、というのはよく聞く話だ。もらった食べ物を捨てるのは気が引けるという日本人の感覚も、これに拍車をかける。
受け取るときに知っておくとよいこと
断りにくい場合は、受け取る量をその場で調整させてもらうのが角が立たない。「食べきれる分だけ」と伝えるのは失礼にはあたらない。
保存については、キムチ冷蔵庫(김치냉장고)が広く普及している。一般の冷蔵庫より低い温度帯を保ち、匂い移りも抑えられる。キムチを日常的に食べる家庭ではほぼ必需品で、備え付けの住宅も多い。
また、時間が経って酸味が強くなったキムチは捨てるものではない。キムチチゲ、キムチチャーハン、キムチチヂミなど、加熱料理には熟成が進んだもののほうが向く。韓国では古くなったキムチを「ムグンジ(묵은지)」と呼び、むしろ珍重する。食べきれないと感じたら、生食から加熱料理へ切り替えるのが現実的な解決策になる。
よくある質問
Q. キムジャンはいつ行われますか。
A. 11月下旬から12月初旬が中心です。白菜が凍らず、発酵も進みすぎない気温の時期に合わせています。地域によって前後します。
Q. ユネスコに登録されたのはキムチですか。
A. いいえ。2013年に登録されたのは「キムジャン文化」——集まって漬け、分かち合うという営みのほうです。
Q. おすそ分けを断ってもいいですか。
A. 量を調整させてもらうのが現実的です。「食べきれる分だけ」と伝えることは失礼にあたりません。
Q. 酸っぱくなったキムチはどうすればいいですか。
A. 捨てる必要はありません。キムチチゲやチャーハン、チヂミなど加熱料理には熟成したもののほうが向きます。韓国では「ムグンジ」と呼んで珍重します。
Q. キムチ冷蔵庫は必要ですか。
A. キムチを日常的に食べるなら便利です。低い温度帯を保ち、匂い移りを抑えられます。備え付けの住宅も多くあります。


